どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第八回ということで▲高見泰地四段△田中魁秀九段の対局を紹介します。
高見四段は手堅い棋風の若手実力派居飛車党。
棋士レーティングも執筆時現在で53位とC級2組の中ではかなりの上位につけています。
対する田中九段は大ベテラン。佐藤康光九段、阿部隆八段などの師匠としても知られています。
居飛車党で、軽い指し回しを得意としています。
相矢倉の▲3七銀で始まったこの将棋、▲4六銀に対してすかさず△4五歩と反発しました。
定跡書では長く無理筋とされてきたこの▲4六銀拒否ですが、
ここ最近塚田泰明九段をはじめとした一部の棋士によって見直しが進んでいます。
本局も塚田九段の実戦例に沿って進んでいきました。
新しい将棋となったのが第2図。
この▲6五歩は△同歩と取ってくれれば9二の角の利きが二重に止まり大きな利かしですが、
△5三金とされてみると角が死んでしまっています。
そこで▲6四歩△同金と呼び込み▲8一角成△同角▲5三銀と両取りをかけましたが、
冷静に飛車を逃げてから△2八角と打たれてみると飛車だけでなく成銀まで狙われることとなり
▲3七桂と合駒を余儀なくされてしまいました。
こうなると一方は駒を使わされ、もう一方は駒を拾っていくという駒得パラダイスとでも言うべき展開。
後手玉が薄いので簡単ではありませんが、かなり後手が有望な形勢と言えます。
高見四段としては何かしら誤算か錯覚があったのでしょう。
更に進んで終盤となったのが第4図。
駒台の金を7一に打つという勝負手で迫る高見四段ですが、ここからの田中九段の攻めが見事でした。
角を見捨てて△5五馬とし、▲8一金に△8五桂が急所の一撃。
▲6八銀と引かせることで後の△6九銀をより厳しくしています。
最終的に図のようになりました。
△6九銀だけでなく△5八銀も入り、さすがにこうなると先手玉はもちません。
△6七銀成から精算し、△6六歩が決め手となり田中九段の勝ちとなりました。
既存定跡のかなり根本の部分に挑戦して勝利を収めた本局でしたが、
この流れがどこまで続くのか私個人としても非常に注目しています。
この将棋に限らず「○○良し」と結論が出ている順であっても実はそれを覆す手が眠っていた
ということが思った以上にあるのかもしれません。