どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第九回ということで▲小林裕士七段△富岡英作八段の対局を紹介します。
小林裕七段は関西所属、早見え早指し・鋭い攻めに定評のある居飛車党。
森内名人の著書でも
小林六段は時間がなくても手が見えるタイプ。
本筋を行くシャープな攻めが持ち味である。
と評されるなど、その実力は高く認められています。
(筆者注:引用中の段位は出版当時)
なお関東にも全く同じ「こばやしひろし七段」がいらっしゃいます。
そしてその小林宏七段も攻め将棋の居飛車党。面白いこともあるものです。
対する富岡八段は第一回でも紹介した通り角換わりのスペシャリスト。
本局も自然に進めば一手損角換わりの採用が予想されるところでしたが、
先手の小林七段が▲2六歩~▲2五歩としたため手損のない角換わりとなりました。
第1図は何の変哲もない序盤の局面。
ここからいきなり▲2六銀と上がったのがこの将棋のポイントとなりました。
以前似た将棋で▲勝又△永瀬を紹介しましたが、その将棋は銀交換の後以下の局面を迎えています。
この△3八歩の応手がなかなか悩ましく、実戦では▲4八銀と交換した銀を投入して受けに回りました。
この例に限らず、最近では早繰り銀に打って出ても一方的に攻める展開にならないことが多くなっています。
そこで先手が更に過激な手段を求めた、というわけです。
第3図は早繰り銀でも定番となっている▲3六歩と打った局面。
自然な手は△3二金ですが、実戦は強く△4五銀と打ったばかりの歩を狙っていきました。
早繰り銀の▲4六銀型ではできない▲2六銀型ならではの筋ですが、
先手側もこの際に狙われないように▲5六歩と突かなかったわけですから
双方の主張が真っ向からぶつかった局面と言えるわけです。
更に進み第4図、▲4四銀△同銀▲2四飛と先に銀を捨てて飛車を走った局面。
両取りがかかり△3二金と上がらなかったのを咎められたようですが、
ここで狙いの一手がありました。
△2三歩!が好手。
▲同飛成とすれば4四の銀は取れなくなるので▲4四飛としたいところですが、
その展開になれば△3二金としていない分玉の安定度が段違い。
余裕を持って△5五角などの攻め合いに出ることが出来ます。
実戦は▲2三同飛成と飛車を成りましたが、
以下△3二銀▲2二龍△3三角と豊富な持ち駒を投入して受けに回りペースを握りました。
もっとも形勢そのものはまだまだ僅差。
この後も小林七段の迫力ある攻めを富岡八段が受け続けるという激戦が繰り広げられました。