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広島の話 その4

いきなりですが実戦次の一手問題。

問題図
正解は後ほど。

こちらが升田幸三杯の会場「十日市きんさいセンター」。

会場
2年前に出来たばかりの綺麗な施設で、体育館のようなホールや調理室など設備が整っています。
三次駅から徒歩5分ほどという立地もGood。

【1局目】
この大会は6ラウンド制、つまり勝っても負けても6局必ず指せる方式。

第1図
先手をゲットして対ダイレクト向かい飛車から迎えた図の局面。
居飛車がやや作戦勝ちですがここで▲1六歩としたのがまずく、△4四銀とされてむしろ作戦負けに。
その後も色々粘ってみたものの丹念に切らされ、じっくりと押し切られて負け。

図では何が何でも▲2五歩と仕掛ける一手でそれで居飛車が指せていたと思います。
感想戦では▲6六歩と△1四歩の交換が入っていない局面で▲2五歩と仕掛けた順を検討したため
後に△6五桂打と継ぎ桂で難しいという結論となりましたが、この場合はそれがありません。

【2局目】
またも先手、相手がノーマル中飛車の出だしからウソ矢倉に変化するという陽動作戦に出ましたが
組み上がってみると一手損したウソ矢倉に収まってしまい良くなかったようです。
一方的に攻め倒して勝ち。

【3局目】
第2図
今度は後手番、やや得をした序盤戦を経て迎えたのが図の局面。
ここで△5五歩▲同歩を入れてから△8五飛と桂を取ったのが工夫の順。
▲8六歩△8二飛▲8五歩に△5五銀と捨てて、強引に△7七桂を実現させ快勝でした。

【4局目】
第3図
先手番を引き、4→3戦法に▲5六歩▲5七銀型で対抗しました。
図は直前の▲6六歩に反応して△3六歩から一歩切ってきたところ。
これには普通▲4六銀がワンセットの一手ですが、この場合は△3九角で困ります。
類型の実戦例では▲5八金左~▲6七銀としてから▲4六銀としていますが、
それでも△3九角から暴れてくる順が気になって指し切れませんでした。
これぐらいは事前に準備しておくべきです。

第4図
更に進んだ局面。相手に小ミスがあり▲4一角が入っています。
ここでは何はともあれ▲8五角成と馬を作っておくべきでした。
以下△4二金▲7五馬△6三銀▲6六馬△1二香▲5五歩となれば先手有利。
実戦は馬を作っても大したことがないと見て3二の金を取って飛車を成り込みましたが、
おおよそこういう攻めは幸せになれないとしたもの。粘り倒したものの元が大差で負け。

【5局目】
第5図
後手で矢倉の将棋。
急戦矢倉にするのがセオリーですが、どうにも誘われている感じで気が進みませんでしたが
しかし▲4七銀▲3七桂の同型矢倉にした場合、先手の一手得がどのように作用するのかまるで分からず、
少し無理気味でも△5五歩から動いてみました。
ただ後の進行を考えると、△6五歩とこちらから仕掛けたほうが良かったかもしれません。

第6図
かなり進んで上の局面に。
ここで△7七歩▲同桂△7六金▲6七銀打△9七桂成▲同香△6六金▲同銀△8六飛が前からの読み筋。
実際▲6七銀打まではそう進んだものの、肝の一手と言える△9七桂成とすべき局面で
秒に読まれとっさに指したのが△6六金。
あ、切れました。南無~。

【6局目】
先手で対横歩取り△8四飛。冒頭の問題図はこの将棋からの出題です。
正解は▲5六角で、香取りの受け方が難しく先手有利を通り越して優勢でしょう。
実戦は△2二飛としましたが、▲8九飛として次の▲7五銀~▲8四歩が非常に受けにくくなりました。
以下緩みなく攻め続けて快勝。

結果3勝3敗の五分で今大会を終えました。
4勝2敗を一つの目安に考えていたこともあり、結果・内容共に不満の残る出来でした。
更に実力をつけて来年再び挑みたいと思います。

広島の話 その3

広島で有名な?弁当屋さんに「むすび むさし」というところがあります。
元々広島駅で寄る予定でしたが、広島将棋センターの近くにもあるということで、ここでかなり遅い昼食に。

弁当
実は2年前に同じように広島に来た際にもみじちゃんからむさしをオススメしてもらったのですが、
諸々の都合でいただけなかったという過去がありました。
今回念願叶って2年越しのむさしゲットと相成ったわけです。

中身
若鶏むすび820円。
おにぎり2個と唐揚げというコンビニなら半額で買えてしまいそうな内容ではあるのですが、
全体的にふっくらと空気をそこそこに含んだ食感ながら、米粒が柔らかく潰れるという感じがせず
かなり腹持ちの良いという代物故に、少なくとも値段相応の価値は十分あるかと。
良いものを推薦していただけたと思っております。

こうして充実の広島市内を後にし、真の目的地・三次へと向かいました。

三次駅
広島駅から約1時間半、三次駅に到着。
昨年来た時と違い、駅やその周辺の再開発が始まっており様相が変わりつつありました。
来年はどうなってるのでしょうかね。

・8月31日
ところで三次市は「霧のまち」を標榜しておりまして、文字通り霧深いことで知られています。

霧
朝一番、絵に描いたような霧の様子。

しかしこれは序の口で、なんと「霧の海」なるものが三次にはあるのです。
霧を海、そこから顔を覗かせる山を島に見立てているわけですね。
時期が微妙ではありますが、現地の知人が良い展望台に連れて行ってくれました。

山
7:45頃、山を登っている段階で既に明るすぎ・・・
もっと早い時間に来ることが望ましいようです。

真っ白
何を撮っているのかという感じがしますが、それぐらい霧で真っ白。
深すぎる上に明るくて反射してますね。

霧の海
帰り間際に少しそれらしい風景を見ることが出来ました。
ライブカメラもあるので興味のある方は是非。

この後知人氏と別れ、大会会場である「十日市きんさいセンター」へと向かったのでした。

広島の話 その2

村山先生のお墓に続いて向かったのがこちら

はい、またお墓です。
「マキ君」とは昨年亡くなった日本語ラップ界の奇才・Maki The Magic氏を指します。
日本のHiphop界の黎明期からDJ・トラックメイカーとして活躍し、後にMCとしても活躍した稀有な方でした。

ということでまずは井口小学校へ。

広電
路面電車の広島電鉄。
昔ながらの車体のイメージが有りましたが、新型の方がよく走ってました。

駅
井口駅。いのぐちと読むんですね。

お墓
山をぐるっと回って到着。丁度小学校の裏側にあたる場所に墓地があります。
そこまで広い墓地でもないので、全く見つからないということはありませんでした。

次に向かったのが広島将棋センター

センター
広電立町駅から徒歩数分。
予定より1時間半遅れの到着、順位戦・竜王戦以外なら不戦敗という酷い有様でした。

ここで普段チャットでもお世話になっているたま氏と合流。
互いの地元アマ棋界の情報交換など有意義な時間を過ごすことが出来ました。

広島の話 その1

8月31日に広島県三次市で開催された升田幸三杯に参加してきました。
それに合わせて小旅行してきましたので少しお付き合いください。

・8月30日
広島駅
広島駅に到着。再開発の最中であるようだ。この後バスに乗車。

バス停
バスを下車。ここからひたすら山を登る。

山中腹
20分ほど歩いたところ。山登ってる感ありません?

お墓
目的地はここ。何があるのかといいますと、村山聖九段のお墓です。
お墓を正面から撮るのも気が引けましたので、その辺りはモリノブ先生のブログでどうぞ。

森信雄の日々あれこれ日記 – 村山聖九段のお墓参り

ところでこの墓地がなかなかの広さで見つけるのが大変でした。
しかも経営母体の異なる2つの霊園が隣り合っており、更に話をややこしくしています。

墓苑
碑には「みくまり『霊園』」とあるが、看板には「水分『墓苑』」とあります。
先生のお墓があるのは「墓苑」の方。

区画入口
区画も全部で5つほど。こちらが正解。

ここでやたら時間がかかり、後のスケジュールが狂ってくるのでありました。

持将棋の話。

おはようございます。
色々すっぽかしましたが何食わぬ顔して再登場させていただきます。

王位戦第三局がタイトル戦22年ぶりの持将棋となったのも記憶に新しいところですが、
実は私も先日道場で指した将棋が持将棋になりました。
折角なので持将棋について採り上げたいと思います。

入玉模様での決着の付け方はおおまかに分けると

  1. 両対局者の合意、または第三者裁定の下での判定
  2. 宣言法
  3. その他

の3つであると言えます。

1つ目の判定というのはスタンダードな方法で、冒頭で触れた王位戦の将棋もこれでした。
アマチュアの場合は大会や道場の運営者によって「この辺りで」と止められる場合もあるでしょう。

ただし問題となるのは具体的にどういうタイミングで判定とするのか具体的に決めることができない点です。
両対局者による合意が得られた場合は特に問題にはなりませんが、
片方は持将棋にしたいがもう片方はまだ続けたい、となればこれは終わらず延々と続くことになります。
また第三者の裁定の場合、果たして適切なタイミングでなされているかという問題もあります。
(事実このような事例も存在するわけです)

2つ目の宣言法はその問題を解決すべく策定されたルールで、
手番の側の対局者が「条件を満たした上で」宣言を行い、規定の点数以上であれば勝ちとするものです。
これもやはり決着を付けねばならないアマ大会で主に用いられてきた経緯がありますが、
最近プロの対局でも少し形を変えて導入され、話題となりました。

さて、これで相入玉問題が解決したかといえばそうではありません。
厄介なのは宣言するにあたっての「一定条件を満たした上で」の部分。

対局規定(抄録):日本将棋連盟

「第3章 対局の進行」・「第6条 指し直し」・「C.入玉宣言法(現行の24点法に基づく)」
の箇所に宣言法のルールが記載されています。
(アマ大会でのルールも点数の部分や引き分けを除けばほぼ同じです)

見るからにごちゃごちゃしてますね。

宣言側の敵陣3段目以内の駒は玉を除いて10枚以上存在する。

というのは実戦であればうっかりしてしまいそうなものですし、

ただし、点数の対象となるのは、玉を除く宣言側の持駒と敵陣3段目以内に存在する宣言側の駒のみである。

というの規定自体を知らないという方は相当多いでしょう。
そして最大のポイントは、

尚、条件1~4のうち一つでも満たしていない場合、宣言側が負けとなる。

というところ。何か一つうっかり見落としてしまった時点で負けになってしまうのです。
(事実昨年とある大会の代表決定戦にて、局面勝ちでも宣言失敗による負けという事態が発生しました)

そのためアマ大会で入玉模様になった場合は対局規定の紙を片手に指し手を進めることとなり、
そういうことをせざるを得ないようではルールとして半ば失敗だと言わざるを得ません。

そういうこともあって宣言法も完全ではなく、それ以外のルールを採る場合もあります。
将棋ウォーズでも採用されている「トライルール」はその代表格でしょう。
先手は5一、後手は5九の地点に玉が進めばその時点で勝ちとするものです。
分かりやすいルールであるため一定の支持を得ている一方、
将棋本来のルールからかけ離れているとして否定的な意見も少なくありません。
既に将棋ウォーズでもトライルールの廃止がアナウンスされているなど、
完全に市民権を得るには至っていません。

また特殊な事例としては、そもそも判定をしないというものもあります。
つまり対局そのものは秒読み無しの切れ負け制としておき、
相入玉になろうが時間が切れるまで指し続けてください、というわけ。
さすがに滅多に見かけるものではありませんが、全国大会につながる某大会で採用されているようです。
ローカルルールとしては一理あるのかもしれません。

このように入玉模様の将棋の決着の付け方は非常に難しいものがあります。
ここにきてプロ・アマ双方でルールの細かい変更をを行うなど改正の機運が生まれつつあるので、
より良い方向に向かうことを願っております。
運営裁定により同点後手勝ちや、宣言ミスによる負けということが起こるのは悲しいことです。

C級1組 第9節

どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第十一回ということで▲阪口悟五段△近藤正和六段の対局を紹介します。

近藤正和六段はご存知ゴキゲン中飛車の生みの親として有名ですが、
対する阪口五段も中飛車のエキスパートとして有名です。
著書「ワンパク中飛車」は現在の先手中飛車の礎ともいうべき内容が記されています。

そんな二人の対局は相中飛車・・・とはならず、
阪口五段が石田流を目指したところで角交換~お互い馬を作る力戦形になりました。

第1図

図は駒組みが一段落したところ。
先手が一歩得していますが、後手の駒組みの方が伸び伸びしているので釣り合いは取れています。

むしろこの局面、後手には△7一玉~△8二玉や△9六歩~△9八歩など指したい手があるのに対し、
先手には短期的に大きなプラスになる手に乏しくやや忙しい意味がありそうです。
そこで先手の次の一手は▲3五歩!

第2図

思い切った打開で驚きました。
△3六歩が見えていますが、後に▲3四歩~▲3三歩成となれば銀を引かせることができ、
その間に中央にて厚みで勝負しようという意図があるように思われます。

以下△3六歩▲3四歩△3七歩成▲同金△4五桂打!

第3図

▲3三歩成△3七桂成▲同金△6五歩!▲5五歩!

第4図

△同銀▲同銀△同馬▲4三と
と凄まじい殴り合いに突入します。
後手もと金を放置しておくのはかなり怖いところですが、
相手の言い分を通さないことがより大事だということなのでしょう。
私なんかはまず受けることから考えてしまいますが。。。

第5図

更に数手進んだこの局面も、△5一歩と受けるかと思いきや、
△5六歩▲同銀△同馬▲6四桂!とやはり攻め合います。
ここまで来たら最早お互い歯止めが効かない状況なのでしょうね。

この後も激しい殴り合いが続きますが、最後に制したのは後手の近藤六段でした。
迫力のある攻め合いが全面的に展開された好局だったと思います。

C級1組 第8節/C級2組 第8節

どうもShimaです。
年始早々サボってしまいC1だけでなくC2も進行してしまいました。
そこで「順位戦C級ウォッチング」第十回は次の一手形式の合併号とすることにしました。

テーマは「この手で投了」

【問題1】

問題1図

C級1組▲浦野真彦八段△佐藤秀司七段より。
先手は歩切れ。玉頭戦が一息ついたかと思われましたが・・・

【問題2】

問題2図

C級2組▲西川和宏五段△伊奈祐介六段より。
▲6三歩成は△4八歩で事件なので・・・

・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

【正解1】
▲1五銀打
まで後手投了。

正解1図

歩があれば誰でも▲1五歩とするところですが、
駒台にあるのが銀一枚だけに盲点に入ってしまう一着かもしれません。

以下△1五同香▲同銀△同銀▲同香△1三歩となっても
▲同香成△同桂▲同角成△同玉▲1一龍で一手一手。
どこかで△1四歩と下から支えても受けにならないので投了もやむなしですね。

浦野八段は詰将棋のハンドブックシリーズ、ニコ生での解説などでご存じの方も多いでしょう。
棋風もトーク同様独特の軽妙さが特徴で、
最近は本譜のような独特の角交換型の四間飛車穴熊で星を稼いでいる印象があります。

対する佐藤秀七段ですが若手キラーとして知る人ぞ知る存在で、
2011年には戸辺六段・佐々木慎五段・広瀬王位(!)を破り竜王戦本戦に出場する快挙を達成。
地味ながら素晴らしい将棋を指す方なので、是非とも応援して頂きたい棋士の一人です。

【正解2】
▲4七角
まで後手投了。

正解2図

成銀を責める自陣角が絶好手。
5一か6八に成銀を追いやっておけば▲6三歩成が悠々間に合うわけです。

西川和五段は奨励会員の頃から相穴熊の名手として知られています。
問題図にも至るまでに実に細やかな指し回しで自陣への脅威を取り除くなど、
その才は本譜でも存分に発揮されました。

負けてしまった伊奈六段ですが、ここまで2勝6敗と精彩を欠いています。
降級点9名に対し1-7・2-6が11人という状況なので
1勝分でも抜け出せばかなり安全になるところ。
何とか耐えて欲しいですね。

C級1組 第7節

どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第九回ということで▲小林裕士七段△富岡英作八段の対局を紹介します。

小林裕七段は関西所属、早見え早指し・鋭い攻めに定評のある居飛車党。
森内名人の著書でも

小林六段は時間がなくても手が見えるタイプ。
本筋を行くシャープな攻めが持ち味である。

と評されるなど、その実力は高く認められています。
(筆者注:引用中の段位は出版当時)

なお関東にも全く同じ「こばやしひろし七段」がいらっしゃいます。
そしてその小林宏七段も攻め将棋の居飛車党。面白いこともあるものです。

対する富岡八段は第一回でも紹介した通り角換わりのスペシャリスト。
本局も自然に進めば一手損角換わりの採用が予想されるところでしたが、
先手の小林七段が▲2六歩~▲2五歩としたため手損のない角換わりとなりました。

第1図

第1図は何の変哲もない序盤の局面。
ここからいきなり▲2六銀と上がったのがこの将棋のポイントとなりました。

以前似た将棋で▲勝又△永瀬を紹介しましたが、その将棋は銀交換の後以下の局面を迎えています。

第2図

この△3八歩の応手がなかなか悩ましく、実戦では▲4八銀と交換した銀を投入して受けに回りました。
この例に限らず、最近では早繰り銀に打って出ても一方的に攻める展開にならないことが多くなっています。
そこで先手が更に過激な手段を求めた、というわけです。

第3図

第3図は早繰り銀でも定番となっている▲3六歩と打った局面。
自然な手は△3二金ですが、実戦は強く△4五銀と打ったばかりの歩を狙っていきました。
早繰り銀の▲4六銀型ではできない▲2六銀型ならではの筋ですが、
先手側もこの際に狙われないように▲5六歩と突かなかったわけですから
双方の主張が真っ向からぶつかった局面と言えるわけです。

第4図

更に進み第4図、▲4四銀△同銀▲2四飛と先に銀を捨てて飛車を走った局面。
両取りがかかり△3二金と上がらなかったのを咎められたようですが、
ここで狙いの一手がありました。

第5図

△2三歩!が好手。
▲同飛成とすれば4四の銀は取れなくなるので▲4四飛としたいところですが、
その展開になれば△3二金としていない分玉の安定度が段違い。
余裕を持って△5五角などの攻め合いに出ることが出来ます。

実戦は▲2三同飛成と飛車を成りましたが、
以下△3二銀▲2二龍△3三角と豊富な持ち駒を投入して受けに回りペースを握りました。

もっとも形勢そのものはまだまだ僅差。
この後も小林七段の迫力ある攻めを富岡八段が受け続けるという激戦が繰り広げられました。

C級2組 第7節

どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第八回ということで▲高見泰地四段△田中魁秀九段の対局を紹介します。

高見四段は手堅い棋風の若手実力派居飛車党。
棋士レーティングも執筆時現在で53位とC級2組の中ではかなりの上位につけています。

対する田中九段は大ベテラン。佐藤康光九段、阿部隆八段などの師匠としても知られています。
居飛車党で、軽い指し回しを得意としています。

相矢倉の▲3七銀で始まったこの将棋、▲4六銀に対してすかさず△4五歩と反発しました。

第1図

定跡書では長く無理筋とされてきたこの▲4六銀拒否ですが、
ここ最近塚田泰明九段をはじめとした一部の棋士によって見直しが進んでいます。
本局も塚田九段の実戦例に沿って進んでいきました。

第2図

新しい将棋となったのが第2図。
この▲6五歩は△同歩と取ってくれれば9二の角の利きが二重に止まり大きな利かしですが、
△5三金とされてみると角が死んでしまっています。

そこで▲6四歩△同金と呼び込み▲8一角成△同角▲5三銀と両取りをかけましたが、
冷静に飛車を逃げてから△2八角と打たれてみると飛車だけでなく成銀まで狙われることとなり
▲3七桂と合駒を余儀なくされてしまいました。

第3図

こうなると一方は駒を使わされ、もう一方は駒を拾っていくという駒得パラダイスとでも言うべき展開。
後手玉が薄いので簡単ではありませんが、かなり後手が有望な形勢と言えます。
高見四段としては何かしら誤算か錯覚があったのでしょう。

第4図

更に進んで終盤となったのが第4図。
駒台の金を7一に打つという勝負手で迫る高見四段ですが、ここからの田中九段の攻めが見事でした。
角を見捨てて△5五馬とし、▲8一金に△8五桂が急所の一撃。
▲6八銀と引かせることで後の△6九銀をより厳しくしています。

第5図

最終的に図のようになりました。
△6九銀だけでなく△5八銀も入り、さすがにこうなると先手玉はもちません。
△6七銀成から精算し、△6六歩が決め手となり田中九段の勝ちとなりました。

既存定跡のかなり根本の部分に挑戦して勝利を収めた本局でしたが、
この流れがどこまで続くのか私個人としても非常に注目しています。
この将棋に限らず「○○良し」と結論が出ている順であっても実はそれを覆す手が眠っていた
ということが思った以上にあるのかもしれません。

C級2組 第6節

どうもShimaです。
「順位戦C級ウォッチング」第七回ということで▲勝又清和六段△永瀬拓矢六段の対局を紹介します。

勝又六段は将棋世界紙上での最新戦法講義が有名ですが、
一方で自身の将棋は力戦形が多く穴熊もやらないなど、現代将棋から一歩離れたものであることも知られています。

対する永瀬六段はデビュー前から振り飛車党として知られていましたが、
最近はステップアップのために居飛車、特に横歩取りを採用することが目立ちます。

この将棋は勝又六段が3手目▲2五歩を採用しました。
振り飛車党に対してしばしば見かける手ではありましたが、
名人戦で森内名人が採用して以来居飛車党に対しても用いられることが増えました。
永瀬六段の武器は横歩取りと振り飛車、まさにうってつけの作戦と言えます。

第1図

少し序盤の駆け引きがあり第1図。
竜王戦で現れた一手損角換わり対早繰り銀のようにも見えますが、本譜は後手が手損していません。
△4一玉と一目変わった位置に玉を動かした永瀬六段ですが、狙いがありました。
ここで指したのが△4二金左!

第2図

手損をしてまでも△3二玉・△4二金型に組むことを優先させる、何とも凄まじい一手ですね。
しかしどうしてここまでしないといけないのでしょうか?
きっかけは一昨年の竜王戦までさかのぼります。

二年に渡る竜王戦七番勝負で一手損角換わりに対する早繰り銀は非常に優秀だと周知されました。
▲6八金型に組むことによって▲5六歩~▲5五歩と出来るようになったことが非常に大きく、
また▲6一角と打ち込んで次に▲7一銀などを狙う筋などもあり
「△3二金・△4二玉型では玉が5筋に近く受け切れない」ことが判明したのです。

第3図

そこに目をつけたのが新手メーカーとして有名な阿部健治郎五段。
「それだけ優秀なら一手の違いぐらい大したことないのではないか」
と言わんがばかりに、いきなり手損のない通常の角換わりでこの早繰り銀を採用したのです。

この将棋はは結果が幸いしなかったこともあり追随する棋士が現れませんでしたが、
序盤理論に定評のある青野九段が再びこれに目をつけます。
佐藤天彦七段相手に大優勢を築き上げ、あと一歩のところまで追い詰めたことでにわかに注目を浴びるようになりました。
新人王戦三番勝負という大舞台で藤森四段が採用したのも記憶に新しいところ。

そして先日指されたA級順位戦▲屋敷△羽生では
一度7八に上がった金を6八に動かし直すという、禁断の先手番手損作戦が出現してしまいました。

第4図

(×6九→6八 ○7八→6八)

今や▲6八金型・△4二金型はそこまでしてでも得たい好形と見られているのです。

脱線が過ぎましたのでそろそろ話を元に戻しましょう。
結果的に一手損角換わりの定跡型に合流し、後手が攻めきれるか先手が受けきれるかという難解なねじりあいの将棋となりました。

第5図

6一にいた飛車をどーん。
このような大駒の捌き方はいかにも振り飛車っぽい感じがしますね。

第6図

本局のハイライト。
次の一手は永瀬六段にしか指せない妙手でした。

第7図

まさか飛車を打って受けるとは・・・
並の居飛車党は△6五角と桂を補充し、△7五桂と攻め合う順を掘り下げるところでしょう。
振り飛車党の血が流れる永瀬六段ならではの感性が光ります。
結局この後数手で永瀬六段の勝ちが決まりました。

今期は開幕からいきなり2連敗と早々に昇級レースから脱落したかと思われた永瀬六段ですが、
その後はしっかり白星をキープしたことで7番手まで順位を上げています。
上位陣の直接対決が残されており、昨期順位の良かった分僅かながらチャンスが残されている状況です。
C2の昇級者争いが熱を帯びてきました。