持将棋の話。

おはようございます。
色々すっぽかしましたが何食わぬ顔して再登場させていただきます。

王位戦第三局がタイトル戦22年ぶりの持将棋となったのも記憶に新しいところですが、
実は私も先日道場で指した将棋が持将棋になりました。
折角なので持将棋について採り上げたいと思います。

入玉模様での決着の付け方はおおまかに分けると

  1. 両対局者の合意、または第三者裁定の下での判定
  2. 宣言法
  3. その他

の3つであると言えます。

1つ目の判定というのはスタンダードな方法で、冒頭で触れた王位戦の将棋もこれでした。
アマチュアの場合は大会や道場の運営者によって「この辺りで」と止められる場合もあるでしょう。

ただし問題となるのは具体的にどういうタイミングで判定とするのか具体的に決めることができない点です。
両対局者による合意が得られた場合は特に問題にはなりませんが、
片方は持将棋にしたいがもう片方はまだ続けたい、となればこれは終わらず延々と続くことになります。
また第三者の裁定の場合、果たして適切なタイミングでなされているかという問題もあります。
(事実このような事例も存在するわけです)

2つ目の宣言法はその問題を解決すべく策定されたルールで、
手番の側の対局者が「条件を満たした上で」宣言を行い、規定の点数以上であれば勝ちとするものです。
これもやはり決着を付けねばならないアマ大会で主に用いられてきた経緯がありますが、
最近プロの対局でも少し形を変えて導入され、話題となりました。

さて、これで相入玉問題が解決したかといえばそうではありません。
厄介なのは宣言するにあたっての「一定条件を満たした上で」の部分。

対局規定(抄録):日本将棋連盟

「第3章 対局の進行」・「第6条 指し直し」・「C.入玉宣言法(現行の24点法に基づく)」
の箇所に宣言法のルールが記載されています。
(アマ大会でのルールも点数の部分や引き分けを除けばほぼ同じです)

見るからにごちゃごちゃしてますね。

宣言側の敵陣3段目以内の駒は玉を除いて10枚以上存在する。

というのは実戦であればうっかりしてしまいそうなものですし、

ただし、点数の対象となるのは、玉を除く宣言側の持駒と敵陣3段目以内に存在する宣言側の駒のみである。

というの規定自体を知らないという方は相当多いでしょう。
そして最大のポイントは、

尚、条件1~4のうち一つでも満たしていない場合、宣言側が負けとなる。

というところ。何か一つうっかり見落としてしまった時点で負けになってしまうのです。
(事実昨年とある大会の代表決定戦にて、局面勝ちでも宣言失敗による負けという事態が発生しました)

そのためアマ大会で入玉模様になった場合は対局規定の紙を片手に指し手を進めることとなり、
そういうことをせざるを得ないようではルールとして半ば失敗だと言わざるを得ません。

そういうこともあって宣言法も完全ではなく、それ以外のルールを採る場合もあります。
将棋ウォーズでも採用されている「トライルール」はその代表格でしょう。
先手は5一、後手は5九の地点に玉が進めばその時点で勝ちとするものです。
分かりやすいルールであるため一定の支持を得ている一方、
将棋本来のルールからかけ離れているとして否定的な意見も少なくありません。
既に将棋ウォーズでもトライルールの廃止がアナウンスされているなど、
完全に市民権を得るには至っていません。

また特殊な事例としては、そもそも判定をしないというものもあります。
つまり対局そのものは秒読み無しの切れ負け制としておき、
相入玉になろうが時間が切れるまで指し続けてください、というわけ。
さすがに滅多に見かけるものではありませんが、全国大会につながる某大会で採用されているようです。
ローカルルールとしては一理あるのかもしれません。

このように入玉模様の将棋の決着の付け方は非常に難しいものがあります。
ここにきてプロ・アマ双方でルールの細かい変更をを行うなど改正の機運が生まれつつあるので、
より良い方向に向かうことを願っております。
運営裁定により同点後手勝ちや、宣言ミスによる負けということが起こるのは悲しいことです。

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